なぜ偽装が起きてしまう?

なぜ偽装が起きてしまう?

わたしの個人的な見解ですが、「ニーズにこたえる制度がない」からだと思います。

様々な視点から多様な意見があります。その確かな現実的社会の課題として、日本社会は、外国人労働者の力を必要としています。いえ、すでに多くの外国人労働者の活躍があって、現在の日本社会が成り立っています。反対意見もあると思いますが、この原稿を読んでくださっている方の多くは同じ認識に立っておられると思いますので、この件はこのくらいにしてお話を前に進めます。

ではなぜ我が国には外国人労働者を受け入れるための制度が無かったのでしょうか。

大きな転換点は、1999年に閣議決定された「第9次雇用対策基本計画」です。その中で政府は、「専門的・技術的分野の外国人労働者の受入れをより積極的に推進」し、「単純労働者の受入れについては、(中略) 十分慎重に対応する」として、高い技術を持つ外国人労働者は日本社会のプラスにもなるから受入れるが、一般的な労働者は原則受入れしないという方針を明らかにしたのです。単純労働者という表現が分かりにくくなっていますが、これは一般的な仕事に従事する労働者のことです。この点も事実への評価が分かれるかも知れませんが、学術論文ではありませんので、根拠をあれこれと示すことは控えます。

しかし社会にニーズがある以上、代替できる仕組みを使って、受入れする会社が現れます。代表的なものを3つご紹介しましょう。それが、「留学生」「技能実習生と特定技能者」そして「偽装技人国」です。

 

まず最初に増えた、つまり活用しやすかったのが留学生です。留学生と言いながら許可を得て時間制限のもとで就労できましたし、仕事内容も特に制限はありませんでした。日本語学校があれば海外から若者が呼べますから特殊な免許も必要ありません。
さらには就学という勤労学生を想定したような在留資格までできて、一時は20万人を超えるまでになりました。コンビニ、ファミレスなどで留学生のバイトスタッフをたくさんみかけるようになりました。

しかし、労働者確保のために日本語学校の運営をする人材派遣会社が現れたり、奨学金と言って日本語学校の学費を援助する代わりに卒業後の就労を約束させる違法な雇用契約をあっせんするブローカーが現れたり、学校を休んでバイトばかりして就労制限時間を超過する事例が多発しました。
その後在留資格「就学」の廃止、就労制限時間の超過に対して厳正な対応がなされるようになり、徐々に問題は減少しています。ただしいまだに不正奨学金制度(介護に多いです)や制限時間超過等の問題があり、「偽装技人国」同様、政府の対策は厳しくなるとわたしは見ています。

 

次に注目してほしいのが技能実習生です。事実上唯一の外国人労働者受入れ制度です。しかし、制度開始当初(研修制度)は労働者ではないという定めがあり事故があっても労災が適用されないという問題、アジア諸国に対する技術移転による国際貢献を第一目的とするという大前提が労働者確保とはかけ離れている事、転職制限があることへの人権面での批判等があり、外国人労働者受入れ制度であるとの社会的認知がなかなか定着しませんでした。それでも、特に中小企業にとっては魅力ある制度であり、着実に受入れ数が増えてきました。

そのような紆余曲折を経験し、幾度か衣替えをしながらも40年以上の歴史を重ねた技能実習制度は、2024年6月21日に改正法が公布されました。その内容は、「人手不足の解消のためである特定技能者へと育てるための制度」へと生まれ変わるというものです。つまりいよいよ、正式な外国人労働者確保育成制度「外国人育成就労制度」の誕生です。2027年4月1日から6月21日までの間にスタートすることが決まりました。

セットで活用すべき特定技能制度は5年が経過しました。試験ルートと技能実習ルートがありますが試験が実施されていない国があるという問題、技能実習と特定技能で許可されている仕事内容が違うという問題があり、政府の想定よりも受入れが進んでいない状況がありました。しかし育成就労制度の誕生により仕事内容の整合性が図られますので、大きく前進します。2027年以降、外国人労働者の受入れは育成就労から特定技能へというのが正規ルートになるでしょう。

この制度には免許制度があり、日常的に問題の調査や指導が実施され、かつ相手国政府と協定を定めて送出し側のブローカー排除や奴隷のような契約を排除できる仕組みがあります。日本社会への負の影響を心配する皆さんにとっても、その心配を減らせる仕組みです。

 

以上のように外国人労働者の受入れ制度は、育成就労・特定技能によってやっと誕生するものです。これまで、無かったと言えるわけです。

さらには「技人国」は高度人材だから「我が国の経済社会の活性化に資する専門的・技術的分野の外国人については、積極的に受け入れていく必要があり、引き続き、在留資格の決定に係る運用の明確化や手続負担の軽減により、円滑な受入れを図っていく」という入管の方針(法務省出入国在留管理基本計画)の負の遺産として、「偽装技人国」が生まれてしまった、わたしはそのように見ています。

つまり偽装技人国を雇用している雇用主の多くは、もっと良い制度があれば、正しい制度でルールに則って外国人を雇用したい、と思っているのではないでしょうか。

わたしたちは、そんな皆さんのお力になりたいと思っています!

 

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